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あと施工鉄筋定着 解説シリーズ1

投稿者TI4年近く前

欧米で用いられる「Post-Installed Rebar(あと施工鉄筋定着)」と「Post-Installed Anchor(あと施工アンカー)」の設計理論の違い

鉄筋定着,PIR

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欧米では、コンクリートとコンクリートを接続するための「Post -Installed Rebar:PIR(あと施工鉄筋定着)」と、
設備などの付帯物プレートの固定に適用する「Post-Installed Anchor:PIA(あと施工アンカー)」は区別されており、
異なった設計基準が定められています。

ここでは、欧米で広く用いられてる「PIR」と「PIA」の設計理論の違いを説明します。


図1.「PIR」・「PIA」設計理論の概念図

欧米で用いられている「PIR」は、主にRC構造設計基準(EC2-2、ACI 318など)に沿って付着強度や定着長さなどを設計します。

PIR」の設計では接合部の引張荷重に対する検討のみをおこないます。せん断荷重は面荒らしされたコンクリート接合面で骨材の
摩擦作用で負担することを基本とするため設計では考慮しません。引張荷重に対する設計検討で考慮する破壊形態は、
①鉄筋破断
②付着破壊
③かぶりコンクリートの割裂破壊で、
脆性的な破壊に至るコンクリートコーン状破壊を発生させない設計をおこないます。

一方、「PIA」の設計では、あと施工アンカー設計基準(ETAG001、EC2-4、ACI 318など)に沿って引張荷重、せん断荷重の設計
検討をおこない、考慮する破壊形態も(PIRの設計に比べ)多岐にわたります。


表1.「PIR」・「PIA」設計基準の比較




PIR」の適用部位は、スラブコンクリートの増設、柱の新設、壁の増厚補強など様々なコンクリート接合部に用いられています。


図2.スラブコンクリートの増設、壁の増厚補強、柱の新設


日本の建築基準法においては、あと施工で鉄筋をRC部材の接続要素として使用する基準がまだ定められていなく、現在は国土交通省が
主体で基準化に向けた検討が行われています。コンクリート建造物の高齢化が進んでいる日本では、環境負荷の高いスクラップ&ビルトを
さけ、既存建築ストックの有効活用が望まれており、多様な部位に適用の可能性が広がる「PIR」の基準化が期待されています。

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